知は力なり

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ケインズの逆襲 ハイエクの慧眼  

まとまった時間に本を読むためガバっと8冊借りてきました第二段。

実はガルブレイス借りてきたけど、どうも読めねえなと思って、返したら、なぜかまたナチュラルにハイエクを検索してて「ケインズの逆襲 ハイエクの慧眼」を借りてきてしまった。

また、経済の本だよ。

ケインズハイエクは真逆の思想を持った経済学者だよな、その両方をヨイショしてるとはどういうこと?と思って手にしたが、やはり副題にあるように

「巨人たちは経済政策の混迷を解くカギをすでに持っていた」

ということで、

大きな政府派にしろ自由主義派にしろやはり歴史の天才たちというのは、高尚な目的意識とこの世の真理を追究する意志があり、そこの独自性を加えつつ、精密に理論を構築しようとしてるわけで、もう目の付け所が違うのだから、そういう「マスターキー」はすでに持っているわけだよ。

ぼくはそういう普遍の何か、時代が変わっても残っていく原理みたいなものが好きなのだけど、この本のそういう雰囲気にぼくは直感的にひきよせられたのかも知れない。

 

んで、

彼らは認知能力がズバ抜けているからこそ歴史に名を残す天才であるわけで、マスターキーを持つことを許されたわけで、

問題は、それを受け継いだ天才になれなかった弟子たちや、既得権益を守るべくその美しい理論を歪曲して用いる強欲な実務家や、その理論が理解できない庶民や、庶民に迎合して票を集めることに忙しいゆえに学者に耳を貸さない政治家などが発端になって歴史の悲劇がくるのだ、そういうことが天才たちのつぶやきを見るとよくわかる。

だからこそ本書ではケインズハイエクの両者が、肯定的に語られているのだ。

そのいっけん相反する論敵として同じ時代を生きた両者の共通点を見出すには、そうとう深くまで掘って本質へ到達しないといけない。

この二人をいったんまとめて良いとこ取りする解説が、この300ページ弱の量で読めるからお得です。

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ケインズハイエクはよく、対比して語られるのだけど、この本は彼らの思想の解説とか、半生を描いた物語ではなく、さっきも言った本質みたいなのを演繹して語りたいとする書だ。

 

さて、この本はパラッと目次を見てもその構成とタイトル付けなどが全体的にうまいが、ソ連崩壊の原因も諸説ある中、それに関しても当時のハンガリーの経済学者の観察が触れられていて、それを求めていたぼくはまたひとつ知識が増えた。

 

さてさて、もう一つ重要だと感じた部分を書いておかなければいけない。

それは第5章 「ゲーム理論による制度分析」で、日本型雇用の実態が丸裸にされていたことだ。

このブログを読んでくれている読者は、「哲学」だったり「国力」だったり「ケインズ」だったり、そういう検索でやってくる人々だから、どちらかというとサラリーマンというより、教師とか学者とか執筆業、IT系の人なのかな(まだ、6記事書いたぐらいで言うなという感じだが)。

だから日本型雇用に疑問を感じている人々だと勝手に想定して、その日本型ホニャララをディスる形で話を進めていきたいのだが、

まず、日本型雇用とは何のことかというと、年功序列・出世・終身雇用の仕組みだ。

ぼくらのお父さん世代とか、その先輩たちである団塊の世代、高度経済成長を支えたあの世代に代表される働き方だ。

でもこういうさまざまなアメとムチでわが社に縛り付けるやり方は、経済学的には労働力の流動性が損なうため、まったくダメダメな制度だが、

日本の経済を成長させたのは、間違いないだろう。

でも今の時代、終身雇用とか幻想を持っている若者など要るのだろうか?

年金も破たんして、東芝外資に吸収されて、AIが台頭してくる時代だ。

そういう制度とか未来が見えなくても、心理的に若者からしたら今時年功序列なんてアホらしくてやってられないだろう。なんで仕事のデキない先輩や上司よりおれの待遇が悪いんだ、オレの方が結果出してる。こんな会社に一生いる意味ないだろ、ホリエモンだって多動力と言ってるし、そもそも憲法でも職業選択の自由を謳ってるじゃないか、誰が好き好んでブラックの出世競争に参加するよ、、、ブツブツ、と。

たしかにお父さん世代は、すぐ仕事を辞めるなんて根性が足りん、というが、

今はYoutuberも仕事として成立する時代だし、彼らを雇いこむ事務所もできるし、次々に転職サイト出てきては「とりあえず30までに あと2年 」「いまの会社との出会いが 自分を変えた」「転職力」「わがまま転職」なんて言ってるし、時代は変わった。

 

それでもなぜいっこうに日本型雇用がずーっと続いているんだろう? 

 

これが、長年の問いだったが、

この本を見てすべての謎が解けた!

それは日本の国民性や価値観、文化や伝統などというフワッとした理由ではなく、すべてゲーム理論で説明できるじゃないか!

男は働き女は家を守る、も

株式持ち合い、も

企業別労働組合、も

スーパー人事部、も

メインバンク、も

ぜーんぶ丸裸にされています。

 

ゲーム理論でいえば、他者の振る舞いが自分の選択がダイレクトに影響するわけだから

こりゃ、日本の制度改革なんて期待できなくて、自分で何とかしたほうが早い、という結論に達するよ。

 

早いとこ読んで、つぎに行く方がいいと思うよ。

 

 

おわり。