グローバリゼーションを擁護する ジャグディシュ・バグワティ
みなさんはグローバリゼーション、好きですか?
グローバリゼーションは経済を豊かにするので賛成派と、
格差を広げ、国内の産業を棄損し、内需を奪うので反対だ、
という賛否両論があるでしょう。
これはどちらが正しいということもなく、立場によってほぼほぼ賛成反対が決まります。
ざっくり分けると、経済学者なら賛成、社会学者やナショナリストなら反対、こういう構図です。
さらに国際競争力のない農家や中小企業ももちろん反対です。
さて、私はどちらかというと、やや賛成です。
なぜか?
これはこの本の著者バグワティ教授の論説を見てもらえればわかります。
さて、グローバリゼーションの害を叫んでいる人々はどういう主張をしているのでしょうか?
・グローバル企業が中小企業を駆逐している
・グローバル企業は労働者を不当に酷使している
・グローバル企業は環境を壊している
・グローバリゼーションは貧困を深刻にし、格差を助長している
・グローバリゼーションは文化を侵食している
・グローバリゼーションは民主主義を毀損している
・グローバリゼーションは国内産業を危機にさらす
・・・・
こういう感じです。
ここにデータによる分析と客観的な評価はあるでしょうか?
鄧小平が改革開放政策(グローバル対応)をとった中国が、なぜあんなに経済成長したのでしょうか?海外市場へ進出するユニクロとかスターバックスとかイケアとか、そういう企業はとてつもなく安い賃金で現地の人々を雇っているとでもいうのでしょうか?外資を排除して国内企業だけに活動を許すと一国の経済は成長する(国力に直結する)のでしょうか?文化というものを考えるとき、鎖国したほうが豊かになるでしょうか?開国したほうが豊かになるでしょうか?グローバリゼーションと民主主義の関係はどうなのでしょうか?そこと独裁ー貧困ー格差ー経済力ー人権、というものにどういう因果があるんでしょうか?グローバル企業が著しく環境を破壊している具体的データはあるんですか?
こういう問いに、あなたは答えられるでしょうか?
そこが定かではないなら、まずこういう擁護派の意見に耳を傾けてみてもいいかもしれません。
バグワティさんのいいところは、彼自身は経済自由主義者と言われながらも、グローバルの負の側面も実名や実組織を挙げて暴き出しているところです。
グローバルマンセーな単純な思想家でも、グローバリストの利権を守る御用学者でもありません。
グローバリゼーションには確かに問題がある、だがそれは反グローバリストが煽るような危険ではない、というバランスの取れた見方で世界を見ることがぼくらには必要です。
グローバルをうんぬんする時は、読んだことがないとお話にならない一冊です。
もちろん僕は紙の本で持っています。
内容的にはアメリカ人(インド系)らしく読みやすい文体になっていますし、グローバルマンセーを押しつけるわけでもない。積読するにもこういう本が一冊あるとまさに教養人です笑。
さすがに経済学者、あらゆる国の事例を網羅的に検証し、データをあらゆる角度から検証しまくって450ページもの分厚い本になってますので、その分厚さに怯みそうになりますが、そういう本じゃないと読みごたえがない強者やドMな読者はぜひチャレンジしてみてください。
バランスの取れた見方、というのは印象で語るのではなく、定量的見ることで我々人間にははじめて可能になる能力です。
グローバリストも反グローバリストにもおすすめです。
おわり。